【くま子の冒険 58】

2007-09-02(Sun)
7月31日
 昨晩は洞窟に泊まったんだけど、夜中にふと目が覚めたんだ。
 ジャリッ、ジャリッって音が、かすかに聞こえてくる。
 桃美さんもその音に気づいたらしく、既に壁の隅に身を隠すようにして構えている。
 魔物がボクらの跡をつけてきたのかな?
 ボクも起きて身構えようとした時、闇の中に低い声が響いた。
「起きてんなら動くんじゃねーぞ、お嬢ちゃん」
「誰だ!」
「誰だっていいじゃねーか。俺のことなんか覚えてないほうが後々気が楽だぜ」
 暗闇の中で何かが素早く動いて、ボクの上に覆いかぶさってきた。
「グヘヘ……なるほど、あのジジイが心配するだけのことはあるぜ」
 ちょっと変な発音からすると外国人?
 暗いし、顔の半分を覆うくらいのゴーグルをしてるから顔はわからないけど、日本人離れした体格なのは確実。
「な、何が目的なのさ!」
「そんなこともわからねーほどガキじゃねーだろ?」
 そいつは、ボクの体をまさぐり服を脱がそうとする。
 ひぃー、たすけてーっ!
 逃げ出したいけど、起きたばかりだし、まだ眠いし体が思うように動かないっ。
「ぐがあああっ」
 突然、そいつはくぐもった悲鳴を上げてボクの上から飛び退いた。
「この野郎っ……」
 ビキンッという耳慣れない金属的な音が何度かして、桃美さんの舌打ちする音が聞こえてきた。
 どうやら桃美さんがワイヤーでボクを助けてくれたみたいだけど、そのワイヤーが切られてしまったみたい。
「へへへ、そっちのお嬢さんもなかなかのもんじゃねーか。2週間も我慢した甲斐があるってもんだ。今夜は楽しめそうだぜぇ」
 そいつは、でっかいサバイバルナイフを手に桃美さんに襲い掛かる。
「ガキ以外の奴のことは聞いてねーからなぁ、テメェは容赦しねぇぜ」
「くま子、今のうちに逃げるのよ!」
「逃がさねぇぞ」
 洞窟の出口に向かって走り出すと、その男はボクを追ってきた。
 うう、ダメだ。足場が悪いし、寝起きでうまく走れないっ。
 ふらふら走ってたら背後から突き飛ばされ、ボクは転倒してしまった。
 咄嗟に受身はとったけど、岩の角が背中にぶつかってものすごく痛い!
 背中が痛すぎて立ち上がれないよっ。
「後でたっぷり可愛がってやるから大人しくしてな!」
 くやし~っ。
 逃げ出した挙句に追撃されて動けなくなるなんて格好悪すぎるっ!
 こうなったら、せめて一矢報いてやるぞっ。
 いざという時の為に覚えておいた悪魔バルベイアの召喚魔法を使ってやる~。
 悪魔バルベイアは、標的を魔獄の炎で焼き焦がすらしいよ。
 あの男が桃美さんとの戦いに気をとられている今が召喚のチャンス!
 背中が痛いけど、ここは我慢。
 召喚円陣を描いて呪文を唱えて、いでよ悪魔バルベイア!
 ………………。
 出てきたのは握り拳くらいのフンバの頭だった。
 そんな馬鹿な!
 召喚円陣も呪文も完璧だったはずなのに~!
 こうなったらヤケクソだっ。
 行け、フンバボール!
 フンバボールは、ふわふわと男のほうに向かっていく。
 そして、男に体当たりする前に気づかれてしまいスパッと斬られてしまった。
 でも、次の瞬間、恐ろしいことが起こった。
 真っ二つにされたフンバボールから、臓物のような吐しゃ物のような気色の悪いものがドバッと噴出したんだ。
 しかも握り拳くらいの大きさからは想像もできないくらい大量に!
「うぎゃあああああああ!」
 男は狂ったように絶叫し、その場に卒倒してしまった。
 暗いおかげではっきりとは見えなかったから助かったけど、間近で見てたらボクも気持ち悪さのあまり気絶してたかもしれない。
「くま子、大丈夫?」
「うん、何とか……。そいつは?」
「完全に気を失ってるわね」
 桃美さんは、男にとどめを刺そうと提案したけど、ちょっと可哀想だからワイヤーでぐるぐる巻きにして洞窟に放置することにした。
 運が良ければ脱出できるかもしれない……っていうか、この男、確実に脱出してきそうでコワイ。
「そう思うなら、とどめを刺しておくべきよ」
「そんなこと言ったって~」
「そんな甘いことじゃ、ここでは生き残れないわよ」
 でも、結局、その男は生かしておくことにした。
 で、この日の午前中は背中が痛くて動けず洞窟の入り口で休憩。
 午後から魔物の町に向かったけど、町にたどりつく前に夜になってしまった。
 町の地下を調べるのは明日に延期だね。
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